藤沢周平著 『蝉しぐれ』

蝉しぐれ (文春文庫)

蝉しぐれ (文春文庫)

下級藩士牧文四郎とふくの恋の物語。お互い恋心を抱きながらも結婚という形で結ばれることはなかった。

川辺でふくが蛇に噛まれた。そして、文四郎は噛まれた箇所に口をあて、毒を吸い取った。ここから2人の恋心は始まる。しかし、ふくは藩主のもとに奉公に出されてしまう。2人の愛は切り離される。さらに文四郎の父が死んでしまうという困難があった。しかし、文四郎は父の死を乗り越え、成長した。牧家の禄も復活した。

数十年後に2人が結ばれた。文四郎は2人の子の親。ふくはこれから尼になろうとしていた。

10代前半の恋が40歳前後になって結ばれるというのもロマンティックである。
最後のシーンで文四郎がふくの白い胸など見なければよかったといっているが、このような形で結ばれる愛も見事である。1回限りの愛の形であることがお互いを燃え上がらせたのかな。もう会うこともないだろうと文四郎も言っているしね。一種の不倫だけど、あまりいやらしさを感じない。おそらく藤沢周平氏の文章表現が巧みであるからだろう。

僕が40歳頃になったとき、10代の頃好きだった女の子と結ばれることがあれば、幸せを感じるだろうな。現代社会の倫理上、それは許されることではないけどね。





ん、それって昔の彼女とよりを戻すってことか(笑)。